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腸内細菌叢のバランスをBifidobacterium(ビフィズス菌)のような腸内有用菌を増やしClostridium(クロストリジウム)のような腸内有害菌を抑制する事が生活習慣病を予防する為にきわめて重要である事が明らかにされてきています。
その事が一つの大きな動機となって、機能性食品開発が進んできました。
食品の体に対する機能の面から見ると「栄養機能」と「感覚機能(美味しい)」の2つの機能に加えて「体調調節機能」を備えている事が明らかになって来たのです。
これは食品中に共存する有害物質の中和・解毒作用や、体調調節機能、健康増進作用、などの機能を持った食品の事を言います。
具体的には
- 生体防御:アレルギー低減化、免疫賦活 等
- 疾病予防と回復:高血圧、糖尿病予防 等
- 体調リズムの調節:神経系調節、消化機能調節、内分泌機能調節 等
- 老化抑制:過酸化脂質生成抑制 等
などの作用が上げられます。
機能性食品の分類
機能性食品はその作用機序から分類すると、プロバイオティクス(Probiotics)・プレバイオティクス(Prebiotics)・バイオジェニックス(Biogenics)に分けられます。
プロバイオティクス:「腸内微生物のバランスを改善する事により宿主動物に有益に働く生菌添加物」で乳酸菌・納豆菌・酪酸菌(宮入菌)などの生菌剤及び発酵乳・乳酸菌飲料がこの範疇に入ります。
プレバイオティクス:「結腸内の有用菌の増殖を促進したり、有害菌の増殖を抑制し、その結果、腸内浄化作用によって宿主の健康に有利に作用する難消化性食品成分」でオリゴ糖や食物繊維がこれに含まれます。
バイオジェニックス:「直接あるいは腸内細菌叢を介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍作用、抗血栓・造血作用などの、生体調節・生体防御、疾病予防・回復・老化抑制など生体に直接働く食品」で免疫強化物質を含む生理活性ぺプチド、植物フラボノイド、DHA、EPAなど生活習慣病の予防に有効な成分がこれに該当します。
ではそれぞれについて詳しく見て行きましょう。
プロバイオティックス
プロバイオティックスとは体に良い影響を与える微生物の事をいいます。
プロバイオティックスとは1989年Fullerにより「腸内細菌のバランスを変える事により宿主に保健効果を示す生きた微生物」として定義された後、Salminenらにより「宿主に保健効果を示す生きた微生物を含む食品」として再定義されたのです。
ロシアの高名な科学者であり、同時にノーベル賞の受賞者でもあるメチニコフはブルガリアに長寿者が多いのは、毎日のヨーグルト摂取にある事を提唱しました。
それは、ヨーグルトの中に含まれる乳酸菌が、食細胞という免疫系細胞を刺激した結果であると洞察したのです。 プロバイオティクスを考える時、腸内細菌との関連が重要になって来ます。
私達の腸内には細菌が棲みついていて、私達(宿主)に様々な影響を与えています。腸内に住む菌たちは長い生物の進化の歴史の中で最適の棲家としてそこを見出し、私達(宿主)も排除せずにそれを許しました。 腸内細菌は共生させてもらう為に宿主に利益をもたらし、免疫系を中心として私達の生体機能維持を積極的に援助してきたのです。この腸内細菌こそがプロバイオティックスそのものでもあるのです。
口から摂取した物を体内に吸収する場である腸の免疫(腸管免疫系)は私達の体を病原細菌やウイルスの侵入から守る最前線で、その異常はおそらく食品アレルギーや炎症性大腸炎など腸管免疫系特有の疾病の原因となります。
更に、腸管免疫系は全身免疫系と密接に関係していますから、腸内細菌の腸管免疫系への作用は全身免疫系にも達し、アレルギーを始めとした免疫系疾患の予防・治療を可能にしています。
プロバイオティックスの免疫機能
人における研究
- NK細胞の機能強化
- マクロファージの機能強化
- アトピー性皮膚炎の予防
動物における研究
- IgA産生促進
- 経口免疫寛容の誘導
- マクロファージ、NK細胞、T細胞、B細胞等の機能促進
- がん細胞の縮小
- 炎症性大腸炎モデルにおける治療効果
更に、腸内細菌叢のバランスを有用菌(プロバイオティックス)優勢、有害菌劣勢にコントロールする事が腸内代謝に反映し、高血圧、高脂血症、脳卒中、
心臓病、糖尿病、骨粗鬆症、肝硬変等の生活習慣病や老化、発癌の予防にも有効であるという事が明らかにされつつあります。
腸内細菌
詳細な研究によると1人の大腸内には実に500種類以上、その数たるや糞便1g当り実に約1兆個の細菌が棲みつき、大腸内に棲息する細菌の全重量はなんと約1.5kgにも達するとされています。
その細菌の種類は個人によって異なります。この腸内細菌は腸管免疫系の形成に重要な働きをしていますが、この大腸細菌叢は年齢、食生活、薬物、ストレス、健康状態によって大きく変わってきます。
これら腸内細菌の中で、体に有益なものがプロバイオティックとして選ばれておりますがその代表的なものとして、乳酸菌・ビフィズス菌などが知られています。
以下に代表的な菌種をあげてみました。
プロバイオティックスに用いられている各菌種
- Bifidobacterium longum(Bifidobacterium=ビフィズス菌)
- Bifidobacterium bifidum
- Bifidobacterium infantis
- Bifidobacterium animalis
- Bifidobacterium lactis

- Pediococcus acidophilus
- Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus(Lactobacillus=乳酸菌)
- Lactobacillus acidophilus
- Lactobacillus casei
- Lactobacillus paracasei
- Lactobacillus plantarum
- Lactobacillus reuteri
- Lactobacillus rhamnosus
- Propionibacterium freudenreichii
- Enterococcus faecium
ここで、プロバイオティックスの効果の内、アレルギーと癌について今の段階で分かっている事を医療文献より抜粋してみました、
一緒に見てゆきましょう。
アレルギーとプロバイオティックス
子供のアレルギー患者と健康な子供の腸内細菌叢には差がある事が報告されています。
健康な子供達の腸内には乳酸菌(ラクトバチルス)が多く、この乳酸菌がアレルギーを抑えていると推定されます。 この推定を実際に検証した報告では、乳酸菌を妊婦・新生児に投与した結果、アトピー性皮膚炎の発症率が半分に減少しています。
重症成人アトピー性皮膚炎患者では大腸炎を多発する事が報告されています。
その腸内環境を把握する為に腸内細菌叢について検討した報告ではビフィズス菌の検出率、菌数及び占有率は平均的健常人に比べ低値を示していました。
その他
- 小児下痢症改善や乳糖不耐症の軽減及び乳児食事性アレルギー症の軽減などが科学的に証明されています。
- ロタウイルス下痢症の改善
- 抗生物質誘導下痢症の改善
- 乳糖不耐症軽減
- 乳児食事性アレルギー症の軽減
大腸癌とプロバイオティックス
人を用いた研究では乳酸菌の摂取により癌が抑制されると言う直接の実験的知見は得られていませんが、間接的な証拠はこれまでに数多く報告されています。
生体外実験では
- 食餌中に含まれる変異原物質(DNAを傷つける元になる物質)であるヘテロサイクリックアミン類が乳酸菌に吸着される。
- 乳酸菌やそれによって産生される物質は腫瘍由来の培養細胞の発育を阻害する。
例えば人結腸由来培養細胞であるHT-29細胞の発育と活性が優位に阻害され細胞の分化が誘導されたという報告もある。
動物実験では
- 乳酸菌の経口投与は化学発癌物質によって誘発される胃や結腸粘膜のDNA損傷を効率よく軽減する。
- 乳酸菌の菌株の中には、発癌物質により誘発された腫瘍や前癌病変を予防する効果が報告されている物もある。
- 発酵乳あるいは乳酸菌培養液の給与はマウスに移植された腫瘍細胞の発育を阻害する事が報告されている。
疫学研究では
フィンランドにおける調査では、脂肪の摂取量が多いにもかかわらず他国に比べ結腸癌の発生が少ないのはヨーグルト等を多く
摂取している事が示唆されている。
また、ケースコントロール研究において、他の要因による影響の可能性を補正しても、ヨーグルトや発酵乳の摂取量と結腸癌の
発生率の低さには相関が認められた。
ちなみにヨーグルトや発酵乳の摂取量と発生率の低さの相関は乳癌においても認められている。
癌宿主の免疫増強効果
- Bifidobacterium infantisが宿主の免疫機能を刺激する事によって腫瘍の増殖抑制や縮小をもたらしたという報告がある。
- Lactobacillus caseiは動物実験において移植した腫瘍に対して抗腫瘍効果と抗転移効果を持ち、化学発癌に対しても抑制する効果を持つと同時に、
抗腫瘍因子を誘導する事が報告されている。
その他の作用
- Lactobacillus acidophilusを含む発酵乳の摂取は大腸菌などのいわゆる腸内腐敗菌の菌数を抑え乳酸菌群(Lactobacillus)の菌数を増加させる事が知られている。(腸内腐敗菌は発癌プロモーターや発癌物質を産生する。)
- 結腸に良性腫瘍を持つ患者に3ヶ月Lactobacillus acidophilusとBifidobacterium bifidumを投与した研究においては投与期間中に糞便pHが優位に低下(酸性に傾く)した。腸管内のpHの低下は腸内腐敗菌の増殖を抑制する為、大腸癌の発生抑制に密接に関連している事が示唆されている。
- 乳酸菌の代謝産物は食餌に含まれる変異原物質に暴露された後のDNA修復酵素を誘導する可能性がある。
プレバイオティックス
一方プレバイオティックスという言葉があります。
プレバイオティックスとは
「結腸内の有用菌の増殖を促進したり、有害菌の増殖を抑制し、結果的に宿主の健康に有利に作用する難消化性食品成分」
でオリゴ糖、難消化性澱粉、食物繊維がこれに含まれます。 オリゴ糖は善玉菌の餌となる一方、悪玉菌はオリゴ糖を食べないので、善玉菌が悪玉菌よりも多くなり腸内のバランスが良くなるのです。オリゴ糖は人の消化酵素では消化されにくくそのまま大腸まで到達します。 食物繊維はオリゴ糖同様、善玉菌を増やします。また悪玉菌が作った発癌性物質を便として排せつしたり、血糖値を下げたりします。しかも消化吸収されずに大腸に到達し、腸内で水分を吸収して
膨張しますので、便の体積が増え、それに伴って腸の蠕動運動が促されるため、便意をもよおす(便秘しにくくなる)のです。 さらに、満腹感を高めることから食べ過ぎを防止し、成人病を予防します。
効用としては
- ビフィズス菌を初めとする腸内善玉菌の繁殖を助ける事により悪玉菌の働きを弱め大腸癌の予防に役立つ。
- 腸内のかさを増す為、排便がスムースになり更に、善玉菌が作り出す乳酸や酢酸が腸を刺激して蠕動を促進する為、便秘対策になる。
- 腸内悪玉菌によって作られた有害物質を吸着したり保水性とかさを増す作用によってこれらを2〜3倍に薄める為、大腸癌の予防につながる。
- 糖質の吸収速度を緩め、血糖値の急激な上昇抑制効果がある。
- 食品中のコレステロールや中性脂肪、等を抱きこみ体外に排泄させる作用があるのでコレステロールを下げる効果がある。
などが上げられます。
バイオジェニックス
そしてバイオジェニックスとは「生体に直接あるいは腸内細菌叢を介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、
整腸作用、抗酸化、抗腫瘍、抗血栓、造血作用などに働く食品成分」の事で免疫強化物質を含む生理活性ぺプチド、植物フラボノイド、
DHA(Docosahexaenoic acid ドコサヘキサエン酸)、EPA(eicosapentaenoic acid エイコサペンタエン酸)など、生活習慣病の予防に有効な食品成分が
これに該当します。
腸内細菌は臓器?
腸内細菌自体を「私達の器官(臓器)そのもの」とする考えもあります。
腸内細菌は私達のお腹の中に「勝手に棲みついている他人」という事ではなくて、私達の肝臓の細胞達、腎臓の細胞達と同じように腸(内)の
細胞達と考える。 つまり私達自身の一部分という事です。
そう考えるならば、腸内細菌叢が異常になるという事自体が、すでに臓器障害を来たしている(私達の体が異常な状態になっている)と考えても良いのかもしれませんね。
【参考文献】
- アレルギー・免疫 Vol.10No.49-21 2003
- 医学のあゆみ Vol.202 No.129842002.9.21
- 医学のあゆみ Vol.207 No.10811-814 2003 12.6
- 日本食品微生物学会雑誌 21(2).87-93,2004
- 臨床栄養 Vol.98No.5 5102001.5
- 腸内細菌学雑誌 15:57-89,2002
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